2010 Fiscal Year Annual Research Report
低次元電子系における量子輸送現象、完全計数統計と量子絡み合いの理論的研究
Project/Area Number |
19740189
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井村 健一郎 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (90391870)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / Anderson局在 / グラフェン / スピンホール効果 / Berry位相 |
Research Abstract |
Z2絶縁体は第一義的にはバンド絶縁体だが、Anderson絶縁体やMott絶縁体もトポロジカルになることが最近の研究で分かってきた。我々は水銀テルル量子井戸(2次元Z2絶縁体)に対するBernevig-Hugues-Zhang (BHZ)模型を用いてドープしたZ2絶縁体の相図を詳細に解析にし、「Z2 Anderson絶縁体相」が存在することが明らかにした。[1]BHZ模型はKane-Mele模型と対照的に連続極限において単一谷(single-valley)の模型で、Γ点近傍における低エネルギー電子の実効的な振る舞いを記述する。場の理論的にはDirac電子はペアで出てきてほしい(fermion doubling)ので二重谷の方が目然な気がするが、元の正方格子に戻るとBHZ模型にも4つのDirac点があり問題はない[2]。これらの4つのDirac点は異なる変数(有効Hamiltonianを特徴づける)の値で現れ、BHZ模型の相図/Z2自明と非自明の境界を決める。我々は転送行列法で局在長のスケーリングを調べることにより、ドープしたBHZ模型の相図を決めた。同様の研究は過去にQSH絶縁体で行われたが、Anderson局在がZ2絶縁体の形成に寄与しているかについてはむしろ否定的な方に決着している[3]。局在の性質は系の対称性に本質的に依存しており、ランダム行列の分類から決まる3つのクラスがある。先行研究で扱われたQSH絶縁体の場合はunitaryクラスに対応するが、我々のデータはsymplecticクラスに属する状況でAnderson局在がZ2絶縁体の形成に本質的に寄与していることを示唆する。つまり、clean limitではZ2自明相にあたる変数の値でも局在の効果でZ2非自明になり得る。 [1]A.Yamakage, Ken Nomura, K.-I.Imura, Y.Kuramoto, J.Phys.Soc.Jpn.80, in press (2011)[arXiv : 1011.5576]. [2]K.-I.Imura, A.Yamakage, S.Mao, A.Hotta and Y.Kuramoto, Phys.Rev.B 82, 085118 (2010). [3]C.W.Groth, M.Wimmer, et al., Phys.Rev.Lett、103, 196805 (2009)
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