2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ不均質高温超伝導におけるボルテックスゆらぎのミュオンスピン緩和法による検証
Project/Area Number |
19740191
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
足立 匡 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (40333843)
|
Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 不均一超伝導 / ミュオンスピン緩和 / ボルテックスゆらぎ / La系超伝導体 / Bi系超伝導体 / 非磁性不純物Zn / 磁気相関 |
Research Abstract |
1. 高温超伝導体におけるポルテックスゆらぎのμSRによる研究 高温超伝導体の超伝導転移温度T_c以上におけるボルテックスのゆらぎ状態の検出を目的として、最適ドープ領域であるLa系超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)のx=0.15(T_c〜37K)とBi系超伝導体Bi_2Sr_2Ca_<1-x>Y_xCu_2O_<8+δ>(BSCCO)のx=0.2(T_c〜88K)にわいて縦磁場下μSR実験を行った。その結果、BSCCOにおいて、20ガウスで、現よりも遙かに高い150K以下でミュオンスピン緩和率の増大を観測した。一方、10ガウス以下の磁場では、緩和率の増大はTc現以下まで見られないことがわかった。10ガウス以下におけるT_c以下での緩和率の増大は、ボルテックスの形成による試料内の磁場の不均一のためと理解できる。一方、20ガウスにおけるT_c以上での緩和率の増大は、超伝導のゆらぎの状態におけるボルテックスのゆらぎのために、試料内の磁場が不均一になったためと考えられる。以上のことから、BSCCOにおいて、T_c以上でボルテックスのゆらぎの状態が実現している可能性が高いと結論した。 2. Bi系高温超伝導体における不純物が誘起した磁気秩序のμSRによる研究 以前、我々がLSCOで観測した、非磁性不純物Znが誘起する磁気秩序の普遍性を明らかにするために、(Bi, Pb)_2Sr_2Cu_<1-y>Zn_yO_<6+δ>の最適ドープ領域においてゼロ磁場μSR実験を行った。その結果、y=0.03の試料において、1K以下の低温でミュオンスピン緩和の増大を観測した。これは、Znによって磁気相関が発達したためと思われる。今後は、他のホール濃度領域において同様の実験を行い、Znが誘起する磁気相関の発達の詳細を明らかにする予定である。
|