2007 Fiscal Year Annual Research Report
真空紫外レーザーを用いた高分解能角度分解光電子分光による高温超伝導体の研究
Project/Area Number |
19740198
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石坂 香子 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教 (20376651)
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Keywords | 物性実験 / 強相関電子系 / 光電子分光 / 高温超伝導 |
Research Abstract |
本研究では、高いエネルギー・波数分解能及び偏光制御性を有するレーザー励起光電子分光装置を用いることにより、高温超伝導体の角度分解光電子分光(APRES)を行っている。 Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(Bi2212)は劈開性が良く高いT_c=90Kを示す、高精度のARPESが可能な物質である。この系を対象としたARPESの結果、これまでで最も鋭く明瞭なスペクトルが得られた。また、面間の相互作用によって2本に分裂したバンドが入射光の偏光の向きに依存した強度を示すことを見出し、偏光制御によりそれぞれのバンドを分離して観測することに成功した(Rev. Sci.Instrum.誌に掲載)。ARPESで得られるスペクトルのピーク幅は、原理的にはキャリアの散乱確率を反映するものであるが、これまではARPESの幅が常に一桁以上大きく、光電子分光の実験精度に問題があると考えられていた。今回得られた最も金属的な過剰ドープ試料のピーク幅(6meV)はテラヘルツ伝導度から得られるキャリア散乱確率とよく一致しており、ARPESから得られる物理量を直接輸送特性と比較できることがわかった。また、その準粒子スペクトルはローレンツ関数で再現でき、擬ギャップなど強い電子相関の顕在化する不足ドープ領域においても準粒子描像が成立していることが示唆された。(Phys. Rev. B誌に掲載) 一方YBa_2Cu_3O_<7-δ>(YBCO)は高温超伝導体の代表格であり、輸送特性、磁気測定など幅広い実験が盛んに行われてきたが、ARPESでは強い表面状態がフェルミ準位近傍を支配してしまうため、研究が敬遠されていた。この系についてレーザーARPESを行うことにより、明瞭なバンド分散およびd波的な超伝導ギャップの観測に成功した。(投稿準備中)。
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