2008 Fiscal Year Annual Research Report
不整合格子系有機超伝導体における反強磁性絶縁相と超伝導相の研究
Project/Area Number |
19740202
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川本 正 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (60323789)
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Keywords | 不整合格子 / 有機超伝導伝導体 / 金属-絶縁体転移 / 反強磁性絶縁体 / 相図 |
Research Abstract |
MDT-TSF分子のSe原子2つをSに置換したMDT-TS分子は、常圧で超伝導を示す不整合格子系有機超伝導体(MDT-TSF)(AuI_2)_<0.436>と同型の(MDT-TS)(AuI_2)_<0.441>を形成する。しかし50Kで金属-絶縁体転移を示し、圧力下でのみ超伝導を示す。常圧での基底状態は反強磁性絶縁体である。同様の物質としてI_3塩があるが、アニオンであるI_3はAuI_2よりも長いため、ドナー分子1個あたりの電荷移動量はAuI_2塩よりも小さい0.407価であり、化学的表記は(MDT-TS)(I_3)_<0.407>である。I_3塩も金属-絶縁体転移を示すが、転移温度は75KとAuI_2塩より高めである。圧力下における抵抗測定から13.5kbarで超伝導と思われる抵抗の減少が観測されたが、ゼロ抵抗は観測できていない。これは、圧力が十分でないか、試料の質が良くないためであると考えている。磁場中では抵抗減少が抑制されることから、超伝導相であることは確実である。常圧の絶縁相は、磁気トルクの測定から反強磁性絶縁相であることを明らかにした。これらの結果から、当初の目的である(MDT-TS)(I_3)_<0.407>の相図のアウトラインを得ることができた。相図はバンド充填率が通常の3/4からずれた場合でも、反強磁性絶縁体に隣接して超伝導相が存在することを明示している。このことは、有機超伝導体においても反強磁性絶縁相が極めて重要であることを示している。
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