2007 Fiscal Year Annual Research Report
TmTeによる反強四極子秩序相での磁場誘起反強磁性構造の解明
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19740208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨田 崇弘 The University of Tokyo, 物性研究所, リサーチフェロー (20437502)
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Keywords | 磁性 / 物性実験 / 電子スピン共鳴 |
Research Abstract |
本研究の目的は、サブミリ波を測定手段として絶縁体であるTmTeのユニバーサルな反強四極子秩序の発現機構を明らかにすることである。対称性の良いf電子系物質などにおいて、四極子モーメントの軌道整列で生じる四極子秩序は、直接磁場とは結合しないためESRのシグナルとしては捕らえられない。しかも反強四極子秩序で知られる物質のほとんどが金属であり、ESR測定自体が不可能であった。これとは対照的に唯一反強四極子秩序をもつ絶縁体、TmTeは透過型パルス磁場ESRとの相性は良い。このような磁場進入が可能な物質では、反強四極子秩序相で磁場誘起された反強磁性構造はESRで観測できる可能性がある。今回、絶縁体物質のTmTeを用いて2.0K以上の磁場中ESRの測定を15T程まで行った結果、ESR信号の緩和時間T1がかなり短いことが分かった。これは、磁性イオンのTm^<2+>が不対電子s=1/2を持つにもかかわらず、軌道角運動量が比較的大きいことによるものと思われる。つまり、この短い緩和時間T1から、反強四極子秩序相での磁場誘起反磁性での軌道角運動量が重要な機構を担っていると考えられる。さらに、はっきりとしたESR信号の観測を行うために、スピンの方向が揃う低温での測定が必要と考えられる。今回、共同利用をさせて頂いている神戸大学の現測定装置を改良してHe^3を利用した冷凍機でパルス測定を行う予定である。TmTeにおける反強四極子秩序相でのESRシグナルの高感度化をはかり、常圧下のTmTeの感度を上げ本研究の四極子秩序の解明に勤める。
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