2008 Fiscal Year Annual Research Report
鉄隕石に由来するL10型FeNi相の電子スピン状態の研究
Project/Area Number |
19740210
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
小嗣 真人 Japan Synchrotron Radiation Research Institute, 利用研究促進部門・材料電子状態解析チーム, 研究員 (60397990)
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Keywords | 隕鉄 / 磁気記録媒体 / 磁性多層膜 / 磁気円二色性 / サスティナブル材料 |
Research Abstract |
20年度は、テトラテーナイト(L10-FeNi)の示す高い磁気異方性の起源の謎に迫るため、構造と磁気モーメントを評価した。測定は大型放射光施設SPring-8において、放射光X線回折測定(XRD)を用いて構造の精密な評価を行ない、磁気円二色性測定(XMCD)を用いて磁気モーメントの担い手であるd電子の振る舞いを直接解析した。なお、L10-FeNi試料は東北大学高梨研究室において分子線エピタキシー法(MBE)を用いて精度良く作製された。 XRDによって見積もられた格子定数はa=3.600Å c=3.562Åと算出された。明瞭な超格子反射が観測されたことから、作製された試料は超構造を持つ事が明らかになったXMCD測定を行ない、得られたスペクトルに対して磁気総和則を適用した。軌道成分とスピン成分の直接的な分離を行なったところ、Feのd電子の軌道成分に顕著な角度依存性が観測され、試料面直方向に増大していることが確認された。一方Niについては有意な角度依存性は確認されなかった。また光電子顕微鏡を用いて磁区構造観測を行なった結果、面直磁化をもつ特徴的な磁区構造を観測することができた。一方、不規則相FeNiにおいては面内磁化の磁区構造が確認された。 このことから、L10-FeNiの大きな磁気異方性はFeの3d電子の軌道成分に由来すると結論づけられた。L10型FeNiの物性把握が進展し、研究が飛躍的に前進した。現在、その成果をまとめた論文を執筆中である。
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