2007 Fiscal Year Annual Research Report
金属絶縁体転移近傍に出現する超伝導・異常金属相の電子状態の解明
Project/Area Number |
19740224
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 康弘 Nagoya University, 高等研究院, 特任講師 (00415184)
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Keywords | 強相関電子系 / 金属絶縁体転移 / 超伝導 / 分子性導体 / 遷移金属酸化物 / 電気抵抗 / 核磁気共鳴 / フラストレーション |
Research Abstract |
分子性導体や遷移金属酸化物で起こる金属-絶縁体転移近傍に見られる超伝導の発現機構の解明を目指して、様々なスピンと電荷の基底状態を示す強相関絶縁体を出発物質として、圧力印加によって連続的に電子状態を制御し、絶縁相の磁性と隣接する金属相や超伝導相の相関を調べた。スピンの幾何学的なフラストレーションのために様々な磁性を示す三角格子分子性導体において、詳細な圧カ-温度相図を構築した。わずかな結晶構造の違いによって、モット金属絶縁体転移の性質だけでなく、面間-面内抵抗の異方性や金属相の性質に顕著な違いが生じることを明らかにした。特に、非磁性のモット絶縁体相と超伝導相とが隣接している実験的証拠を磁気抵抗測定から突き止めた。これらの成果は、強相関電子系の超伝導の発現メカニズムの解明につながる重要な発見である。さらに、極低温で180°回転可能な小型BeCuクランプ式セルを設計し、回転機構付NMR測定用のプローブを設計・製作した。これを用いて電荷秩序をもつバナジウム酸化物のNMR測定を試みた結果、これまで知られていなかった金属-絶縁体転移近傍でのスピン・電荷・軌道が示す局所的な特異性が明らかになってきた。つまり、NMRで観測される局所帯磁率の空間的な異方性が、金属-絶縁体転移に向けて温度変化することを発見した。さらに圧力下で金属-絶縁体転移温度が減少するにつれて、帯磁率において局在スピン的振る舞いから擬ギャップをもつフェルミ液体的な金属へと連続的に移行する様子が観測された。これは、3d電子系においてこれまで明らかにされていなかった、局在スピンと遍歴電子の相互作用の存在を示す重要な実験結果として、今後注目を浴びることになると期待される。
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Research Products
(4 results)