2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740225
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池上 弘樹 The Institute of Physical and Chemical Research, 河野低温物理研究室, 専任研究員 (70313161)
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Keywords | 2次元電子 / ウィグナー結晶 / コスタリツ・サウレス転移 / 準1次元系 / 液体ヘリウム / 表面波 |
Research Abstract |
コスタリッツ・サウレス(KT)転移は2次元系に特有の転移である。このKT転移の典型的な例として、液体ヘリウム表面上の2次元電子系が示すウィグナー結晶転移がある。液体ヘリウム表面は不純物が全く存在しない清浄表面であるため、理想的なKT転移研究の舞台である。本研究では、ヘリウム上の電子系が示すウィグナー結晶転移を舞台とし1て、有限サイズがKT転移へおよぼす影響を明らかにすることを目的とする。そのために、幅5, 8, 15μmの3種類の準1次元チャネルに閉じ込められたヘリウム上の電子に対して伝導度の測定を行った。 本研究の過去2年の研究により、電子の移動度がドライブ電圧の増加にともない急激に低下することが明らかになっている。これは、電子系がウィグナー結晶に転移すると液体表面にdimple latticeと呼ばれる周期的な凹凸ができ、その結果、ドライブ電圧を大きくしていくとウィグナー結晶が共鳴的に表面波を放射するというBragg-Cherenkov(BC)散乱が起こるためである。BC散乱が起こるためには電子系が周期的な構造を持つことが本質的であるため、電子系に結晶構造があるかどうかを調べる有用な手段になりうる。 今年度は、電子密度を系統的に変えて伝導度の測定することによりチャネル間の電子数とBC散乱が消失する温度の関係を実験的に明らかにした。その結果、チャネルの幅が細くなるとウィグナー結晶のBC散乱が失する温度が上昇することが観測された。BC散乱が消失する温度は、有限系でのKT転移においてdislocationが系に進入すると予想される温度と一致する。すなわち、BC散乱が消失するのはdislocationが進入することにより電子の位置の相関が急激に乱されるためであると考えられる。
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Research Products
(6 results)