2008 Fiscal Year Annual Research Report
エピタキシャル安定化を用いた強相関単結晶薄膜の開発と物性評価
Project/Area Number |
19740226
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松野 丈夫 The Institute of Physical and Chemical Research, 高木磁性研究室, 専任研究員 (00443028)
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Keywords | パルスレーザー堆積法 / 強相関電子系 / エピタキシャル薄膜 |
Research Abstract |
パルスレーザー堆積用真空装置を用いてペロブスカイト関連の構造を持つ強相関電子系物質を作製し、その基礎物性評価を行った。 1. イリジウムスピネル酸化物薄膜の作製と評価イリジウム酸化物は、異常ホール効果(Pr_2Ir_2O_7)などの基礎的な物性研究から電極材料(IrO_2)への応用研究に至るまで広く研究されている物質群の一つである。酸化物においてイリジウムの酸化数は4価が圧倒的に安定であるが、3価のイリジウムにホールをドープした新規イリジウム酸化物Zn_<1-x>Li_xIr_2O_4(0<=x<=1.0)のエピタキシャル成長に成功した。基板としてはLiNbO_3(0001)を用いた。イリジウムを含むスピネル酸化物はバルクには知られておらず、これらの酸化物はパルスレーザ堆積法によるエピタキシャル安定化を用いて実現したバルク準安定な新物質である。3価のイリジウムを持つバンド絶縁体であるZnIr_2O_4に対してLiを置換することにより、最低温での抵抗値は減少しx=0.7で最小値をとった。これはホールドーピングによるものと考えられるが、金属状態を実現することはできなかった。 2. イリジウムペロブスカイト薄膜の作製と評価前年度に引き続きエピタキシャル安定化によりペロブスカイト型SrlrO_3薄膜をSrTiO_3(001)基板上に作成し輸送特性を測定した。電気抵抗は150K以下で局在的振舞いを示すものの、金属伝導で説明できることが分かった。一方でホール係数は正の符号を持ち、降温にしたがって増大する振舞いがみられた。これをキャリア濃度の温度変化と考えると最低温(2K)では5×10^<20>cm^<-3>程度のキャリア濃度となり単純な金属としては低い値を示し、SrIrO_3の輸送現象において強いスピン・軌道相互作用が何らかの役割を果たしている可能性を示唆している。
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