2008 Fiscal Year Annual Research Report
ランダムポテンシャル中を駆動される超伝導磁束格子の動的相図
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19740227
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
能川 知昭 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特任研究員 (00399982)
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Keywords | 超伝導 / 磁束格子 / 不純物ピン止め / 非平衡ダイナミクス / ランダムネス |
Research Abstract |
本研究では不純物等によるランダムなピン止めが存在するときの超伝導磁束格子の併進ダイナミクスを数値シミュレーションによって調べた。この目的のため、流体的なふるまいと固体的なふるまいを同時に扱い得るシンプルな格子場のモデルを考案した。結晶化を促す相互作用の強さ、ピン止めの強さ、外部駆動力の大きさという3つのパラメータに対し駆動状態がどのように変化するかを検証した。 2次元系においてシミュレーションを行った結果、ピン止めが駆動力に対し手相対的に弱いときには空間的に一様な併進運動が見られた。これは磁束渦糸が相対的な位置関係を保持したままスライドしていることを意味しており、固体的な運動と呼ぶことができる。しかし相互作用が強くても結晶的な長距離秩序は見られなかった。これは低次元性からくるものと考えられる。一方ピン止めが駆動力に対して強い時には不均一な運動が観測される。ピン止めの強い領域は静止しており、そこを迂回するような流れ場が形成された。これは固体の塑性流動を表している。このような2つの運動状態の問には特異性を伴う相転移はおこらないが、流動性が大きく成長する特徴的なクロスオーバーが存在する。磁束格子の流動性は超電流に対する散逸の度合を意味するので、これはクロスオーバー抵抗の低い流体的状態と高い固体的状態を隔てるものである。 上記のような粗視化モデルの妥当性を考察するため磁束渦糸を直接取り扱うことのできるXY模型によるシミュレーションも行った。渦糸の拡散ダイナミクスは履歴効果を伴う異常拡散であること、ずり応力によって起こる磁束格子の塑性変形は粉体系で見られるジャミング転移と共通の側面を持っていることなどがわかった。
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