2007 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック領域における量子熱輸送の輸送特性や熱流揺らぎに関する理論的研究
Project/Area Number |
19740232
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 圭司 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (90312983)
|
Keywords | 物性基礎論 / 量子輸送現象 / 非平衡現象 |
Research Abstract |
平衡系ではカノニカル分布などの普遍的な測度分布があり、それを利用して様々なマクロな物理量を計算することができる。しかし非平衡の領域では普遍的な測度分布があるのかどうか分からない。一方で揺らぎの定理などに代表される最近の非平衡統計力学の進歩により、平衡から遠い領域でも成り立つ関係式がいくつか見つかっている。これらの流れから、非平衡系で非平衡を特徴づける物理量の分布そのものがどうなるかを見ることは、大変意義があることである。我々は非平衡系の非平衡定常状態の典型的な系として、熱伝導現象を考察した。特に熱流の分布関数の厳密な解析を行った。メゾスコピック系の電気伝導の解析でこれまで研究されてきた完全計数統計の技術を熱伝導系に応用し、量子熱伝導現象における、キュミュラント生成汎関数を導出した。それにより計算される分布関数の特徴的な性質として、分布のテールが両側の熱浴の温度で支配されていることがあげられる。キュミュラント生成汎関数は揺らぎの定理を反映する対称性を満たし、また、熱流に関する輸送係数を定義すると輸送係数間にある関係式を導く。この研究は、そのまま電気伝導の問題にも応用することが可能である。メゾスコピック電気伝導の分野では電流の高次キュミュラントが実験で測定されている。そのため、この研究で見出された対称性や非線形輸送関係式などを電気伝導の問題で考えると実験で測定可能な議論ができる可能性がある。
|