2008 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック領域における量子熱輸送の輸送特性や熱流揺らぎに関する理論的研究
Project/Area Number |
19740232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 圭司 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (90312983)
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Keywords | 物性基礎論 / 非平衡定常 |
Research Abstract |
熱伝導現象の研究として、典型的なモデルであるフェルミ・ウラム・パスタ(FPU)モデルを考え、局在現象と非線形効果の競合に関する研究を行った。よく知られているように質量がランダムである完全調和格子では局在現象が起こり、熱力学極限で熱流が消えてしまう。 非線形格子を考えたときでも、ナイーブに考えれば非線形項は低温ではきかず、高温だけできいてくる可能性がある。局在効果と非線形項の効果の競合にどのような特徴があるかを考えることは、興味深い。大規模な数値計算により、どのような温度領域でも熱力学極限では非線形項が無視できず、局在がとけることが見出された。 また、前年度に量子熱伝導において行った研究をメゾスコピック系の電気伝導の研究に結び付ける研究も行った。「完全計数統計」と統計力学の「揺らぎの定理」を結び付け、実験で観測できるオンサーガー関係を超えた輸送係数間の関係式を見出した。非線形輸送係数とは、温度一定のもとで、2つの粒子浴(リード線)の間に伝導体を介して電流が流れる場合を考え、電流の任意のキュミュラントを電位差で展開した時の係数として定義される。時間反転対称性を考慮すると、これらの係数間に普遍的な関係式が成立することが見出される。電気伝導現象では実験が進んでおり、最近では高次のキュミュラントが測定されている。このことから、この関係式は実験で測定可能であると期待され、例えば、メゾスコピック系でアハラノフ・ボーム干渉系を使えば観測できると思われる。
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