2007 Fiscal Year Annual Research Report
非ハミルトンダイナミクスにおける統計力学諸概念の力学からの基礎付け
Project/Area Number |
19740235
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡辺 宙志 Nagoya University, 情報科学研究科, 助教 (50377777)
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Keywords | 分子動力学法 / エルゴード性 / ランジュバン方程式 / Nose-Hoover法 |
Research Abstract |
Langevin方程式とNose-Hoover法は、どちらも指定温度のカノニカル分布を実現する方程式であるが、前者は確率的かつ時間反転非対称であるのに対し、後者は決定論的かつ時間反転対称という違いがある。この違いを物理的に理解するため、Nose-Hoover法の時間発展を粗視化し、一般化Langevin方程式とすることでマルコフ近似の意味や時間反転対称性の破れを議論した。まず、Zwanzig,森らによる射影演算子の方法と同様な手法でNose-Hoover法で制御された系の時間発展を粗視化し、確率的Nose-Hoover方程式を得た。この際、個々の自由度の運動量に対してエネルギーが十分遅く変化するという断熱近似、およびエネルギーが短時間の相関しか持たないというマルコフ近似を行ったが、この近似により時間発展対称性が破れることが明示的に示された。さらに自由エネルギーの単調減少(H定理)を要請することで揺動力を相乗過程として含む一般化されたLangevin方程式が満たすべき条件を得た。この方程式は運動量の任意関数を含むが、この関数を定数とすれば通常のLangevin方程式、一次関数とすれば確率的Nose-Hoover方程式を得る。したがって確率的Nose-Hoover法による時間発展はカノニカル分布を絶対安定な平衡状態として持つ。もともとNose-Hoover法は拡張されたハミルトニアンに対するカノニカル分布を不変に保つダイナミクスであったから、ミクロに見れば平衡状態のダイナミクスであった。しかし、時間発展を粗視化すれば興味ある系のハミルトニアンに対してH定理が成り立つことから、熱浴として働くことが示された。
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Research Products
(11 results)