2010 Fiscal Year Annual Research Report
非ハミルトンダイナミクスにおける統計力学諸概念の力学からの基礎付け
Project/Area Number |
19740235
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 宙志 東京大学, 物性研究所, 助教 (50377777)
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Keywords | リュービル演算子 / エルミート性 / 変分原理 |
Research Abstract |
温度制御のある決定論的運動方程式のシンプレクティック多様体上での表現の可能性について調べた。運動方程式を表すベクトル場とシンプレクティック形式との内積がハミルトニアンの全微分に等しいことが温度制御のない運動方程式の幾何学的表現である。このとき、リュービル演算子のエルミート性はシンプレクティック形式の反対称性、すなわち外積の反可換性に起因している。カノニカル分布を定常状態に保つリュービル演算子は非エルミートであるので、そもそも微分形式の形では書けないということがわかった。シンプレクティック形式から温度を制御する手法であるNose-Poincare法は、実変数へ変換する際に非正準変換を含むために、温度の幾何学的な意味は不明瞭だが、Nose-Poincareハミルトニアンの正準形式を変形することにより、Nose-Hoover法はNose-Poincare法に拘束条件をつけた形に対応することが示唆された。これは、エネルギー一定の拘束条件を課した上で極小作用の原理を適用したGaussian Thermostat法と同じ構造を持っており、解析力学における「温度」がなんらかの拘束条件に対応していることを示唆する。また、量子系への適用についても考察した。量子系において非エルミートなハミルトニアンは時間発展に対して確率が保存しない系に対応しており、確率の保存則がハミルトニアンのエルミート性に結びついている。しかし、古典系における定温ダイナミクスの非エルミート性は確率の保存則から導かれるものであるので、量子系で広く研究されている非ユニタリなダイナミクスとは対応しない。確率が保存し、かつ時間発展対称性を保ちつつ非ユニタリな時間発展を行う量子系はまだ知られておらず、古典系での定温ダイナミクスに対応する量子系の意味は未だ不明瞭である。
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Research Products
(16 results)