2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740248
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
東條 賢 Gakushuin University, 理学部, 助教 (30433709)
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Keywords | 原子 / 量子エレクトロニクス / 低温物性 / 物性実験 |
Research Abstract |
内部自由度を有する量子渦の研究において凝縮体を光トラップ中に保持する必要があり、内部自由度をもつBECの定量的理解が必要である。特に本研究で行う特異なスピン2BECでは上準位基底状態を利用するため、各スピン状態間の非弾性衝突を定量的に理解する必要がある。非弾性衝突は実験的および理論的にもよく知られていなかったため、本年度において全てのスピンの組み合わせにおける2体間の非弾性衝突ダイナミクスの解明を目指した。本研究分野で有用な破壊測定の性質上、これらを定量的に求めるために高精度な再現性が求められるため、前年度に続き実験制御装置および光トラップの改善によって、BEC原子数の再現性を向上させた。 実験においてまず|F=2, m_F=0>およびF=2, m_F=-1>の1成分BECの時間発展を磁場3Gにおいて観察した。結果、非弾性衝突レートの重要な2つのパラメータを見積ることができた。次に|2, 0>-|2, -1>、|2, +1>|-2, -2>、|2, 0>-|2, -2>、|2, -1>-|2, -2>の2成分BECにおいて時間発展を観測した。1成分BECから求めたパラメータによる計算結果との比較により、勾配磁場による相分離を考慮に入れると実験と計算がよい一致を得ることがわかった。また超微細構造準位の異なる2成分間|2, -2>-|1, -1>、|2, 0>-|1, 0>、|2, -1>-|1, +1>においてダイナミクスの観測を行った。F=2とF=1BEC間でお互いを水平方向に退け合う組み合わせと、軸対称の相分離をする組み合わせが見られた。これらは弾性衝突を表す散乱長と磁場勾配によって説明でき、2成分BECの時間発展の定性的な理解を得た。また相分離の実験と理論計算を比較することで散乱長を精度良く求めることができるため、この結果は理論家に向けた有用な実験結果となる。内部自由度を有する量子渦生成に向けて、スピン2系における未知の重要な2種のパラメータ(弾性衝突および非弾性衝突)についての定量的な研究成果を得ることができた。
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