2007 Fiscal Year Annual Research Report
量子符号化通信のための量子受信機の物理的設計に関する研究
Project/Area Number |
19740253
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
武岡 正裕 National Institute of Information and Communications Technology, 大研究部門新世代ネットワーク研究センター・光波量子・ミリ波ICTグループ, 主任研究員 (70415850)
|
Keywords | 量子符号化 / 量子最適受信機 / コヒーレント光通信 / ホモダイン限界 / 射影測定 |
Research Abstract |
現在のIMDD及びコヒーレント光通信の性能限界はショット雑音によって制限されている。量子情報理論によれば,この限界は原理的にはさらに超えられることが知られているが,その具体的な量子制御の機構や受信機の物理的構成法は必ずしも明らかではない。そこで,最も簡単で現実的な信号変調方式である2値位相変調(BPSK)コヒーレント信号の識別に関して,ショット雑音限界を超えるために必要な量子操作のクラスを明らかにし,現実的な準最適量子受信機の構成方法を提案した。 具体的には,ショット雑音限界はホモダイン測定によって達成されるが,これは量子力学的にはガウス型量子操作と呼ばれる種類の操作に属する。ガウス型操作には他にスクイージングなどの操作も含まれるが,BPSK信号の識別に関しては,ガウス型量子操作と任意の古典操作のみで構成したあらゆる測定器では,原理的にホモダイン限界を超えられないことを証明した。このためホモダイン限界を超えるためには非ガウス型量子操作が必要であり,基本的な非ガウス型操作のひとつである光子検出器を使ったシンプルな量子受信機の構成法を提案し,数値計算によって,現在最も高い量子効率を持つ光子検出器を用いればホモダイン限界を超える実験が十分可能であることを示した。 また,光子検出器に高速の古典的フィードバックを加えれば,原理的には任意の2値の射影測定が構成できることがわかっているが,これを3値に拡張した場合,構成可能な量子測定のクラスは著しく制限されることを明らかにした。さらに,信号間の量子計算までも駆使した量子符号化を実現する場合,これらに加え複雑な非ガウス型補助量子状態が必要となるが,スクイズド状態と光子検出器を使って,2種類の微弱コヒーレント状態を任意の位相で量子的に重ね合わせる手法を提案した。
|