2008 Fiscal Year Annual Research Report
低分解能実験データに基づく蛋白質の動的構造モデリング
Project/Area Number |
19740257
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
城地 保昌 The University of Tokyo, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30360415)
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Keywords | 生物物理 / 蛋白質 / 立体構造ダイナミクス / 分子シミュレーション / 溶液散乱 |
Research Abstract |
本研究は、計算機実験を援用して、溶液散乱データに含まれる蛋白質の動的構造情報を抽出することを目的とする。平成20年度は、原子レベルの分子シミュレーション結果から、生体分子の中性子・X線溶液散乱データを計算し、次の成果を得た。 1. ABC蛋白質MalKのATP結合構造、ADP結合構造、基質がない状態(開構造)の分子動力学計算結果から、それぞれ中性子・x線溶液散乱プロファイルI(Q)を解析したところ、基質状態の違いによる分子の大きな構造変化が、Q〜0.15Å付近に現れることが明らかになった。また、静的構造から計算した散乱プロファイルと、構造アンサンブル(動的構造)から計算した散乱プロファイルを比較した結果、蛋白質の大きな揺らぎの情報が0.2<Q<1.0Åの散乱領域に含まれていることが明らかになった。通常の溶液散乱プロファイルの解析では、このような揺らぎの1青報は無視される。溶液散乱データから、真の蛋白質構造情報を抽出するためには、揺らぎを考慮した新しい散乱プロファイル解析法が必要である。 2. Staphylococcal Nuclease(SNase)蛋白質の分子動力学計算から、溶液中性子非弾性散乱データを計算し、溶液散乱データに含まれる、蛋白質分子の寄与、溶液の寄与、分子と溶液のカップリングの寄与を吟味した。その結果、蛋白質表面の水和水の性質(静的・動的構造)がbulk水と異なることを明らかにした。この結果を基に、我々が以前行った実際の中性子散乱実験データを再検討したところ、実験データにも蛋白質水和水の効果が観られることが明らかになった。
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Research Products
(9 results)