2009 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応ネットワーク系の応答理論構築による生体機能実現機構の解明
Project/Area Number |
19740260
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
粟津 暁紀 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 助教 (00448234)
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Keywords | 反応ネットワーク / 自己組織化臨界現象 / ガラス転移 |
Research Abstract |
本研究の目的は、化学反応ネットワーク系の非平衡統計力学と非線形応答に関する理論の構築を行い、その枠組みを用いて、様々な生物の様々な部位で様々な形で行われる、様々な(広義の)情報処理過程、エネルギーや状態の伝達、識別、変換、蓄積と取り出し(記憶)、に潜む普遍的側面と、系の個性と機能性との相関を明確にすることである。 21年度は、1)大自由度2体触媒反応ランダムネットワーリ系における、自己組織化臨界現象の実現、2)可逆2体触媒反応ネットワーク系における、平衡状態へのガラス系のような遅い緩和、の2点について、研究を行った。 1) 大自由度2体触媒反応ランダムネットワーリ系において、特に、系への分子流入が小さく常に分子数が分子種数と同程度になるような状況における、系の分子の流入に対する応答性について調べた。そしてこのような場合に、系の反応性が時間的に非定常に揺らぎ、反応持続時間とその時の反応数がベキ分布を示すことが見いだされた。また、これが地震や砂山の雪崩等で指摘されている、目己組織化臨界現象と同等の現象であると捉える事ができることを示し、そのような解析から、細胞の反応性の非定常性のメカニズムを提案した。(A.Awazu and K.Kaneko, Phys.Rev.E (2009)) 2) 触媒反応ネットワークのエネルギー論的側面を研究する導入として、エネルギー収支に応じた(詳細釣り合いを満たす)反応率で反応を行う2体触媒反応ネットワーク系における、熱力学平衡状態への緩和について研究を行った。そして温度が高い場合に、系は指数関数的に平行に緩和するのに対し、温度がある程度下がるにつれ、大域的には対数的であるが、複数の段階を持つガラス系で見られるような緩和過程が現れ、また緩和時間が急激に増加する様子が見出された。またこの遅い緩和が、状態エネルギーの大きく異なる2成分が相互に触媒し合う場合に生じる、緩和のnegative correlationを考慮する事で、説明できる事を示した。A.Awazu and K.Kaneko, Phys.Rev.E (2009))
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