2007 Fiscal Year Annual Research Report
シクロデキストリンによる包接現象及び分子認識に関する分子シミュレーション
Project/Area Number |
19740261
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
浦上 直人 Yamaguchi University, 大学院・理工学研究科, 講師 (50314795)
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Keywords | 計算物理 / 超分子化学 / 自己組織化 / 分子認識 / ナノ材料 |
Research Abstract |
シクロデキストリン(CD)の粗視化モデルを構築し、分子シミュレーションを行うことで、包接化合物形成のメカニズムを調べた。本研究課題の目的の一つである粗視化モデルの構築では、CDを環状分子としてモデル化し、CDの特徴である空洞内部が疎水性、外部が親水性という性質、及びCDの形状を考慮した。また、包接化合物を形成する分子として、疎水性の鎖状分子を用いた。 この環状分子と鎖状分子の粗視化モデルでは、擬口タキサンや擬ポリロタキサンの形成をシミゴレーションにより確認することができた。擬ロタキサン形成シミュレーションでは、様々な長さの鎖状分子において、包接化合物の安定性を調べた。この結果、鎖長の増加に伴い、包接化合物の解離は見られなくなり、安定に存在することが分かった。また、環状分子と鎖状分子の間の相互作用によって、包接化合物が形成されることを確認することができ、ホスト・ゲスト相互作用が駆動力になっていることを示すことができた。これらの結果は、実際の実験結果と対応しており、今回構築した粗視化モデルが有効であることを示している。擬ポリロタキサン形成シミュレーションでは、今回構築した粗視化モデルを用いることで、初めてその形成を確認することが可能になった。擬ポリロタキサンを形成している環状分子数の増加に伴い、鎖状分子はランダムコイル状態から伸長した状態に転移し、最終的に棒状の擬ポリロタキサンを得ることができた。棒状の擬ポリロタキサン形成は、実験において観察されており、粗視化モデルの有効性を示す結果であると言える。また、擬ポリロタキサンの形成においても環状分子と鎖状分子間の相互作用が駆動力となっているが、包接化合物を形成する環状分子数の増加にともない、環状分子間エネルギーも減少するため、擬ポリロタキサンが安定に存在する一つの原因になっていると言える。
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