2009 Fiscal Year Annual Research Report
モンテカルロ法と4次元変分法を組み合わせた新しいデータ同化手法の開発
Project/Area Number |
19740292
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 洋一 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (70335298)
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Keywords | データ同化 / 4次元変分法 / アンサンブル法 / 非線形問題 / 大規模数値計算 / 大気海洋結合モデル |
Research Abstract |
アンサンブル法を応用した新しい4次元変分法データ同化システム(アンサンブル4D-VAR)は、昨年度より海洋生態系モデルを対象として開発を進め、そのプロトタイプを構築してきた。このプロトタイプを用い解析を行ったところ、従来のadjointモデルを用いた4次元変分法が初期推定値における局所的な勾配を求めているのに対し、新しいアンサンブル4D-VARは各メンバーの広がっている範囲でフィッティングにより勾配を求めているので、評価関数の巨視的な傾きを求めていることになっていることが示された。このことは、システムが強非線形で評価関数が多峰性を持っている場合に、推定値付近の局所的な極小値を避けて大域的な極小値/最小値を求めることができる可能性を示している。また、予報モデルにおいて不安定現象が卓越している場合、線形化されたadjointモデルが発散してしまう問題がしばしば生じるが、アンサンブル4D-VARでは非線形モデルから直接評価関数を求めているのでこのような問題が発生しない。 そこで、この利点を生かして従来のadjoint法では求めることができなかった大気海洋結合系での逆解析をエルニーニョの発生に関連した不安定結合ケルビン波を対象に行った。その結果は、adjoint法を用いた解析と比較して数倍の時間を遡って結合ケルビン波のシグナルを追跡することができ、アンサンブル4D-VARの有効性が示された。 アンサンブル4D-VARはadjoint法に比べ、計算量が非常に多くなるため、今回対象にした現実的な大気海洋結合モデルでは同化実験を行うことが不可能であったが、並列時のスケーラビリティは非常に良いため、超並列計算機を利用することにより今後の発展が期待できる。
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Research Products
(4 results)