Research Abstract |
19年度までに, 内部磁気圏におけるリングカレントの数値モデルと人工衛星の高エネルギーイオン直接観測データとを統合し, 現実の内部磁気圏でのリングカレントイオン分布の推定するためのデータ同化プログラムを開発した. 20年度は, 19年度に引き続き, このプログラムで推定がどの程度うまく行くのかを評価するため, 数値シミュレーションから別途生成した擬似データを用いてデータ同化のテストを進めた. 様々な衛星の配置を考えてテストを繰り返した結果, 内部磁気圏全体のイオン分布の推定には, ある程度の数の衛星が静止軌道程度の高度に存在する必要があること, 数keV〜数100keVという広範囲のエネルギー帯をカバーする粒子観測が利用できるのが望ましいことなどがわかった. 一方, 直接観測データが充分得られなかった場合でも精度よく推定が行えるようにするために, 直接観測データ以外のデータの利用の検討も始めた。特に20年度は, 磁気圏内に存在するプラズマ圏と呼ばれる領域から放射される極端紫外光の遠隔観測データの利用を検討した. プラズマ圏のイオンの運動は磁気圏内の電場に大きく影響されるが, それが極端紫外光観測にどの程度反映されるのかを数値シミュレーションによって調べ, 内部磁気圏の電場構造が, プラズマ圏の構造に大きく影響し, 極端紫外光観測データにも影響が出ることを確認した. このことは, 極端紫外光データから, リングカレントイオンの分布にも大きく影響する内部磁気圏電場構造を推定できる可能性を示唆しており, 今後, リングカレントイオンの推定手法の開発を進めていく上でも重要な結果である. また, 内部磁気圏のモデリングの一環として, 内部磁気圏において重要な役割を果たす電流の特性についての研究も行った. 特に, 内部磁気圏と電離圏との間を流れるRegion-2沿磁力線電流について低軌道衛星のデータを用いて調べ, リングカレントの発達した磁気嵐時には, 太陽風動圧とRegion-2電流強度との間に一定の相関が見られることを明らかにした.
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