Research Abstract |
本年度は,THEMISミッションによる5機の衛星と静止軌道衛星を組み合わせて推定を行いたいと考えていたが,THEMISミッション期間中に適当な磁気嵐イベントがほとんど発生しなかったこと,一方で前年度に検討したIMEMIS衛星による極端紫外線画像データを用いたプラズマ圏のモデリングにより内部磁気圏環境を包括的に推定できる見込みができたことから,プラズマ圏モデルへの極端紫外線データの同化システムの開発に注力した.まず,逐次データ同化手法の一つである粒子フィルタを用いてプラズマ圏シミュレーションモデルへの同化を行う部分を実装し,極端紫外線画像データから,プラズマ圏プラズマ密度分布,内部磁気圏の電場ポテンシャル分布の推定ができるようにした.プラズマ圏の空間構造は,リングカレントのそれと異なり,過去数日間にわたる内部磁気圏電場の変動に大きく影響されるため,初期値をある程度精度よく決定する必要があるが,この点について現段階では,紫外線画像データの線型インバージョンによって推定を実現している.次に,推定がうまくいくことを確認するために,別の数値シミュレーションから生成した模擬データを用いて同化実験を行った.その結果,内部磁気圏電場の時間変化が激しくない条件の下では,プラズマ圏構造や電場分布がうまく再現できることを確認できた. 一方,内部磁気圏のモデリングの一環として,リングカレントの強さの指標であるDst指数の時間変動について,Burton et al.(1975)に基づいた解析を行い,Burton et al.のモデルで説明できるDstの変動とそうでない変動とを分離する手法を開発した.Dst指数は,今後内部磁気圏環境,特にリングカレントの状態を知る重要な指標であり,その特性の一端を明らかにしたことは,内部磁気圏環境のモデリングを進めていく上でも,一定の意義があると考えている.
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