2008 Fiscal Year Annual Research Report
超低地温勾配域の形成過程と沈み込みメタソマティズムの総合研究
Project/Area Number |
19740312
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻森 樹 Okayama University, 地球物質科学研究センター, 准教授 (00436833)
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Keywords | 高圧変成岩 / 沈み込み帯 / 超低地温勾配域 / 沈み込みメタソマティズム |
Research Abstract |
本申請課題は造山帯に存在する超低地温勾配域の環境を経験した天然の海洋地殻起源の超低温高圧変成岩類について. 地質学的・岩石学的・地球化学的・年代学的な検討から, 超低地温勾配域に特徴的な沈み込みメタソマティズムについて実像把握するころを目指してきた. 研究遂行二年目(平成20年度)は, 第一に, 世界の超低温高圧変成岩類及び, それに関連した超高圧型変成岩についての最新の地質学的・岩石学的知見をレビュー論文として更新した. 第二に, 前年度までに採集した岩石試料から沈み込みメタソマティズムの記載を進めた一方, 低温高圧変成岩の年代論の本質に関わる主要構成鉱物の平衡・非平衡の問題について地球化学的な検討を行った. 特に, 従来の低温高圧変成岩の岩石学的解析において「部分平衡が成立する」と仮定されがちな鉱物共生(例えば, エクロジャイト中のざくろ石斑状変晶とそのマトリクスを構成するオンファス輝石)について、二次イオン質量分析装置による高空間分解能の微量元素濃度及びリチウム同位体比の累帯パターンの特徴付けを行った. その結果, 低温高圧変成岩において経験的に「平衡」関係にあると判断されてきた鉱物共生について, 微量元素濃度や安定同位体比の累帯パターンから非平衡成長を評価可能であることが明らかとなった. この新知見を踏まえて, 超低地温勾配域の沈み込みメタソマティズムを経験した天然の低温高圧変成岩から正確な情報をデコードし, その複雑系の地質現象に年代を与えていくためには, 1)微量元素濃度の累帯パターンの特徴付けまで含めた記載岩石学, 2)変成微細ジルコンのその場ウラン-鉛年代測定を軸としたマルチ年代学のアプローチが不可欠であるという答えに達した.
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