Research Abstract |
陸域や海域の地下圏,特に粘性土中では物質移動が制限されていることから他の環境より微生物の生細胞,死細胞が混在している可能性が高いと考えられる。初年度,次年度は,細胞外DNAと細胞内DNAを分別し,これらを識別することを試みたが,陸域地下堆積物を解析した結果,堆積物中には細胞内DNA量を上回る高濃度の細胞外DNAが存在することが明らかになったものの,おそらくはDNAの化学的分解(酸化反応など)による損傷のため,細胞外DNAから遺伝子情報がほとんど得られなかった(Takeuchi et al., 2009, Geomicrobiol J)。今年度は生細胞,死細胞コミュニテイーを区別するため,RNA,DNAを用いた解析を行った。これまで,微生物量の多い表層を除き,地下圏試料からのRNA抽出は困難であり,微生物量の多い表層付近での解析例しか報告されていなかったが,試料量の増加,RND分解抑制剤ならびにRT-PCR反応促進剤などを用いることにより,陸域の地下<20mの粘土層からRNA,DNAを抽出し,それぞれの微生物相を解析することが可能となった。 古細菌についての解析結果,従来ほとんど海底堆積物中でしかその活動が明らかにされてこなかった嫌気的メタン酸化アーキア(ANME)が,RNA解析の結果陸域地下圏においてもフクティブであることが確認された。またDNA解析とRNA解析の結果には差がみられ,ANMEはDNA解析の結果では,全体に占める割合は低かったが,RNA解析の結果では全体のほとんどを占め,生きている占細菌コミュニテイーにおいて重要であることが示された。以上の結果から,生細胞コミュニテイーの解析にはRNAが有効であること,また嫌気的メタン酸化アーキアが陸域地下圏においても炭素循環において重要な役割を果たしている可能性を示すことができた(Takeuchi et al.in preparation)。
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