2009 Fiscal Year Annual Research Report
有孔虫の殻に残る古生態情報は「最後の深海生底生群集の絶滅事件」を解明するか?
Project/Area Number |
19740317
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
河潟 俊吾 Yokohama National University, 教育人間科学部, 准教授 (90244219)
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Keywords | 深海生有孔虫 / 絶滅 / 古生態 / 古海洋 / 環境変動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1.約60万年前に世界的に同時絶滅した深海生底生有孔虫(Pleurostomellidae科)の殻の内部構造(歯板の形態,起源,層構造)を明らかにすること、2.絶滅有孔虫殻の光学的性質・殻の安定同位体比を解析して堆積物中での生態を明らかにすること、3.最終的に絶滅するに至った原因が汎世界的な深海底の低水温化や酸化的環境の変化と如何に関連しているのかを古海洋学的に解明するための古生態情報を提示することである。 21年度は、国際深海掘削計画(ODP)によってカリブ海および南西太平洋で採取された深海底コア中の絶滅深海生底生有孔虫(Pleurostomellidae科)の化石を摘出し、炭酸塩の殻が続成作用で変質していない、比較的大型の種(Pleurostomella sp., P. brevis, P. alternans)について、殻薄片または部分的に殻を取り除いた観察用標本を作成した。しかしながらこれらの種は産出個体数が少ないことに加えて保存の良い個体数が少なかったため、標本の作製に多くの時間を要した。生物顕微鏡と電子顕微鏡を使用して、上記目的の1.で示した殻の内部構造(特に歯板の起源や層構造)を観察した。他の有孔虫グループに見られる内部構造物(歯板)の層構造は観察できず、その起源も殻の延長が殻内部に延伸して歯板を形成しているように見えることから、殻の内部構造を有する有孔虫の異なる系統関係が示唆される。また、カリブ海および南西太平洋で採取された深海底コア中の絶滅深海生底生有孔虫殻の酸素・炭素安定同位体比測定を行なうための標本の摘出に多くの時間を要したために測定は完了していない。しかしながら産出する群集構成の変化から、海洋循環および深海底環境の変化と密接な関係があることが示唆される。
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