Research Abstract |
本年度は, 申請者によるこれまでの研究では明らかになっていなかった, サントニアン階を中心として産出する, 異常巻きアンモナイト類である, Baculites sp., 及びHyphantoceras orientaleの殻体の酸素同位体組成を行った. その結果, これらの異常巻きアンモナイト類も, Moriya et al. (2003) で解析された種と同様に, 成体はほぼ底生性の生活様式を持っていたと考えられる. 一方, 正常巻きアンモナイト類である, Texanites kawaakiiはBaculitesやHyphantocerasとは異なり,やや高い温度を示すことが明らかとなった. この結果からは, Texanitesは他のアンモナイト類とは異なる生活様式を持っていたことが推測される。 幼殻の分析については,世界で最も保存が良好な試料の一つである, ジュラ紀のQuenstedtcerasについての解析を行った. その結果, 最も初期の幼殻は高い酸素同位体比, すなわち低温を示し, 成長するにつれ酸素同位体比が低くなる, すなわち高温になることが示された. 従って, Quenstedtocerasは卵が低水温の領域, おそらく海底に産みつけられ, 成長するに従い高水温の領域, おそらく海面付近へと移動することが類推される. しかし, ジュラ紀の海水の酸素同位体組成や, 水塊の温度構造が不明であるため, 具体的な水温や環境についての言及は今後の課題である. 一方, 蝦夷層群から得られた試料については, 幼殻の保存状態が悪く, 残念ながら, 信頼性のある酸素同位体比測定に供する試料を得ることができなかった. 本研究によって採取された試料の中には, 未処理のものも多数あることから, 今後, それらの試料を改めて処理することで, 後期白亜紀のアンモナイト類の幼殻の酸素同位体比分析, 及び, その古生態の解析を行う.
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