2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740325
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
興野 純 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (40375431)
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Keywords | 鶏冠石 / パラ鶏冠石 / 光誘起相転移 / As_4S_4 / As_4Se_4 |
Research Abstract |
5族元素であるヒ素は, +5から-3までの幅広い酸化状態を持ち, イオン結合から共有結合, 金属結合, ファンデルワールス結合までの多様な結合種を作る, 鶏冠石(As_4S_4)はAs-As共有結合を持ったAs_4S_4分子性結晶であり, 分子間はファンデルワールス結合である. さらに, 光化学反応によって鶏冠石からパラ鶏冠石に光誘起相転移する性質がある. 本研究の目的は, ヒ素の結合がどのように変化して鶏冠石からパラ鶏冠石に相転移するかを解明することである. 実験では, 原子マーカーとしてSeを固溶したAs_4(S, Se)_4分子性結晶を合成し, その単結晶構造解析を実施してAs_4S_4分子特性を詳細に調べた. 昇華法によってAs_4S_4-As_4Se_4固溶体の良質な単晶を合成することに成功し, これによって全組成範囲の44個の単結晶試料に対して単結晶X線回折測定を行った. 単結晶構造解析の結果, Se濃度の上昇とともにAs_4S_4分子内の4つのS席には連続的にSeが固溶されていくことが明らかになったが, Seはそのうち特定の原子席から秩序的に分配されていくことが判明した. これは, As_4S_4分子内の4種類のAs-S-As結合がエネルギー的に非等価であることを意味しており, 特定のAs-S-As結合では容易にSeと置換するのに対し, 特定のAs-S-As結合では置換しにくい性質があることを示している. つまり, 特定のAs-S-As結合はその結合が切断されやすいのに対し, 特定のAs-S-As結合はその結合が切断しにくい. 本研究で明らかになったこの性質は, これまで提案されている鶏冠石からパラ鶏冠石へのAs_4S_4分子相転移モデルと非常に良い一致を示し, これは鶏冠石のAs_4S_4分子の普遍的な性質であると言える.
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