2007 Fiscal Year Annual Research Report
下部マントル条件下におけるカルシウム珪酸塩ペロヴスカイトの第一原理シミュレーション
Project/Area Number |
19740331
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
土屋 卓久 Ehime University, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (70403863)
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Keywords | 地球惑星内部構造 / 第一原理分子動力学法 / 地殻・マントル物質 / 高圧構造相転移 / ペロヴスカイト |
Research Abstract |
CaSiO_3ペロヴスカイトは地球下部マントルの主要鉱物の一つであり、ほぼ理想的な立法晶ペロヴスカイと構造をとることが知られている。しかしながら室温高圧下ではSiO_6八面体の微小回転に伴って立方晶から正方晶へ結晶格子がわずかに歪んでいることが、最近の実験および理論的な研究から明らかとなってきた。この正方晶相は原子熱振動の非調和効果により高温下で立方晶相へ相転移すると考えられるが、マントル深部に相当する高温高圧下での相転移境界は現在のところ定まっていない。そこで本年度の研究では、構築した並列クラスターシステムを用いて非調和熱振動効果を正しく取り込むことのできる第一原理分子動力学シミュレーション法を実行し、地球マントル温度圧力条件下におけるCaSiO_3ペロヴスカイトの安定構造を決定した。100万気圧程度の圧力において、基本単位格子の2×2×2の大きさを持ち80原子を含むスーパーセルを用いて分子動力学計算を行った場合、5000Kもの高温においても正方晶構造が維持された。この結果はごく最近報告された海外のグループの研究と一致するが、低温での格子歪みが極めて小さいことを考えると合理的には思われない。これに対し、4×4×4の大きさを持ち640原子を含むスーパーセルを用いで計算を行った場合、室温においてもすでに正方歪みが大きく減少し1000Kでもほぼ立方晶構造が安定化した。この結果は、80原子の小さなスーパーセルでは電子状態、格子振動ともにバルク特性を再現するには不十分であり、有限温度効果によるCaSiO_3ペロヴスカイトの構造変化を正しく捉えるには、ブリルアン・ゾーンの密なサンプリングが重要であることを示している。本計算によりマントル温度(〜2000K)におけるCaSiO_3の安定相は、立方晶相であると考えられる。
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Research Products
(40 results)