2007 Fiscal Year Annual Research Report
海底熱水循環が海洋溶存有機物の分布に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
19740335
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山中 寿朗 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (60343331)
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Keywords | 海洋炭素循環 / 海底熱水活動 / 溶存有機物 / 低分子有機酸 / 地下生物圏 |
Research Abstract |
海底熱水活動に伴い、そもそも海水中に溶存している有機物は海底下で起こる熱水循環過程で除去されるのか、それとも地下生物活動などに伴い有機物の供給源となるのか、を明らかにすることを目的に、地質背景の異なる複数の熱水系から採取された熱水試料中の溶存有機炭素(DOC)濃度および低分子有機酸(ギ酸、酢酸)の分析を行った。本年度は、伊豆-小笠原弧上の水曜海山、沖縄トラフの鳩間海丘、伊平屋北部、南奄西海丘、鹿児島湾内の若尊火口の5カ所の熱水系から採取された試料について分析を行った。分析に先立ち、本研究費で導入した有機酸分析システムについて、これまで海水中の低分子有機酸分析に用いていたDIONEX社製イオンクロマトグラフと比較を行い、ギ酸、酢酸の分離性能が同等であること、検出感度は現時点で目標レベルには達していないもののDIONEXのものよりは優れていることを確認した。 分析の結果、DOC濃度は300℃を超す高温の熱水試料であっても、幅広い濃度を示すが、熱水循環の経路に有機物を含むような堆積物を伴わない水曜海山では、周辺の熱水の影響のない海水より低いDOC濃度を示すことがわかった。一方、熱水端成分組成の高いアルカリ度とアンモニア濃度から沖縄トラフでは熱水循環の経路に有機物を含む堆積物の寄与が伺えるが、DOC濃度は水曜海山より有意に高くなっていた。しかし、沖縄トラフの試料でもアルカリ度とアンモニア濃度が他の熱水より低い伊平屋北部では、DOC濃度は海水のそれより低いことがわかった。これらの結果から、海水中のDOCは基本的に熱水循環過程で岩石に瞬着、もしくは高温の反応帯で分解されることによって除去されているが、堆積性有機物の寄与がある熱水系では、堆積物由来の有機物を再び取り込みつつ湧出していると考えられる。 有機酸については現在分析を進めているところである。
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