2009 Fiscal Year Annual Research Report
海底熱水循環が海洋溶存有機物の分布に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
19740335
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山中 寿朗 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (60343331)
|
Keywords | 海洋炭素循環 / 海底熱水活動 / 溶存有機物 / 低分子有機酸 / 地下生物圏 |
Research Abstract |
海底熱水活動に伴い、そもそも海水中に溶存している有機物は海底下で起こる熱水循環過程で除去されるのか、それとも地下生物活動などに伴い有機物の供給源となるのか、を明らかにすることを目的に、地質背景の異なる複数の熱水系から採取された熱水試料中の溶存有機炭素(DOC)濃度および低分子有機酸(ギ酸、酢酸)の分析を行った。本年度は、沖縄トラフの鳩間海丘、伊平屋北部、多良間海丘の3カ所の熱水系から採取された試料について分析を行うと共に、低分子有機酸の高感度分析に取り組んだ。本年度は特に高温の熱水に限らず、噴出孔から噴きだした後、海水と混ざりながら上昇する熱水プルーム試料についても解析を勧めた。分析の結果、高温の熱水にはあまり溶存有機物は存在しないものの、周辺海水に比べ濃度がわずかに低い値にとどまり、中央海嶺やカルデラを伴う海底火山の研究例から推定されている熱水のフラックスに基づき海水中の溶存有機炭素リザーバーに対する熱水循環の寄与を評価したところ、その寄与はごくわずか(0.1%以下)であることがわかった、しかし、熱水プルームについては周辺海水に比べ、2~3割ほど溶存有機炭素濃度が高く、プルームのフラックスから検出した溶存有機炭素の生産速度は、光合成プランクトンによって海面表層で生産され深海にもたらされる有機炭素量と同等であることが推察された。よって、熱水活動そのものは海水への有機炭素の供給源として働いている可能性が高いと考えられる。有機酸の測定については、複数の誘導態化による高感度分析を試したが、熱水の場合、溶存する金属や還元物質の妨害のためか、期待した感度に到達することができなかった。今後のさらなる分析条件の検討が必要であることがわかった。
|
Research Products
(9 results)