Research Abstract |
開発方法を用いて1/4インチステンレスレス鋼製パイプ(内径4.4mm, 長さ50mm) の内面へのDLC成膜を行った. ガス圧力30Pa程度のAr, TMS, CH_4の混合ガス雰囲気で, 40分間成膜を行ったところ, 膜厚は軸方向で3-5μmでばらついており, 平均膜厚は3.8μmであった. DLCを成膜したパイプを縦に割り, 内面と鋼球(直径1.6mm, SUJ2製) を, 垂直荷重2.0N, 2秒間で5mmストロークするという条件で摩擦したところ, 摩擦係数は約0.2であった. 次に同じ条件で成膜されたパイプに対し, パイプを割らずに鋳鉄のシャフト(摺動部直径4.2mm, 長さ10mm, FC250製) を挿入し, シャフトを回転させて摩擦試験を行った. 垂直荷重19.6N, 回転速度120rpmで総すべり距離100mまで摺動させたところ, 成膜時にマイクロ波を投入した開口端から10, 25mmの位置においては比較的短いすべり距離で膜が剥離し, 摩擦係数は内面にDLCを成膜していない場合とほぼ変わらない0.4程度となった. 一方, 開口端から40mmの位置においては, そのような剥離は起きず, 100m摺動時点での摩擦係数は0.17となった. 薄膜硬度計でDLC膜の硬度を調べたところ, 剥離した個所の硬度は5GPa程度であったのに対し, 剥離しなかった個所の硬度は12GPa程度であった. すなわち膜の構造が軸方向に不均一であることが確認された. そのような不均一性を改善するためには, シミュレーションによるマイクロ波投入機構の最適化が必要と考え, パイプ内を伝搬する電磁波と, 電磁界からパワーを吸収することによって密度が変化するプラズマとをSelf-consistentに解析できるシミュレーションコードを開発した. 実験との比較の結果, 電磁周波数がより低いほうがよりプラズマが長く伸びて均一になること, 電磁波の単位投入パワーあたりのプラズマの伸び量がパワーの増加とともに低下すること, などの実験事実が定性的に再現されうることが分かった.
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