2007 Fiscal Year Annual Research Report
電解質溶液系のグランドカノニカルシミュレーションの新しい方法論の研究
Project/Area Number |
19740351
|
Research Institution | Okayama Institute for Quantum Physics |
Principal Investigator |
岩城 貴史 Okayama Institute for Quantum Physics, その他部局等, 研究員 (60416419)
|
Keywords | 計算物理 / 統計力学 / 中性プラズマ / 生体分子 |
Research Abstract |
本研究はシミュレーション手法そのものの研究である。基本的にはイオン粒子をforegroundとそれに対する平均場分布としてのbackgroundに分けてその間で粒子交換を行うというアイデアに基づいている。19年度は当初の予定を変えてシミュレーションの実地研究(データ集め)に力を注ぐことにしたが思わぬ困難に直面した。現時点では具体的な応用までは行かず,本手法の大まかな特徴(計算時間,収束性,安定性,適切なパラメータ領域など)を把握しようとする事に終始している。まず,荷電高分子を含まない単純な3:1:1電解質溶液に対して実際にシミュレーションを実行した。しかしながら当初予想した以上に収束に時間がかかるためなかなかデータを積み上げる事が出来ないでいる。一つ分かったのは,本手法は希薄溶液には適していないと言うことである。希薄溶液ではほとんどの粒子がforegroundに移ってしまいシミュレーションは純粋な静電系に対する通常のGCMCに帰着する。もっとも,この手法はもともと濃厚系への適用を意図していたのでこのこと自体は深刻な問題とはならない。希薄溶液ではbackgroundの濃度によって粒子数をコントロールすることが非常にシビアになり思うように粒子数を減らせない。その結果,これらの領域においてすらシミュレーションの収束時間が当初の期待より格段に長くなってしまうこととなった。一方,アルゴリズムの理論的な問題点をチェック,修正した。この修正によってどのくらい結果が変化するのかについてはまだ確認していない。また,ネックとなっていた荷電高分子の移動の際に凝縮対イオンによる立体障害が起こりサンプリング効率が著しく下がってしまうという問題について,これを解決する方法を考案した。残念ながら実地のシミュレーションの方がまだそこまで進んでいないため効果のほどについては今後の研究をまたなければならない。
|