2008 Fiscal Year Annual Research Report
電解質溶液系のグランドカノニカルシミュレーションの新しい方法論の研究
Project/Area Number |
19740351
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Research Institution | Okayama Institute for Quantum Physics |
Principal Investigator |
岩城 貴史 Okayama Institute for Quantum Physics, 研究員 (60416419)
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Keywords | 計算物理 / 統計力学 / 中性プラズマ / 生体分子 |
Research Abstract |
生体分子の働きを調べたり、あるいはナノテクノロジーの開発を補助する手段として大規模分子シミュレーションの重要性はますます高まっているが系を大きくすればするほど計算時間は粒子数の2乗オーダーで増えていくという問題は依然としてこの種のシミュレーションを行う上での障害となっている。これを解決する方法として力の切断距離を設けたりあるいは遠くの粒子からの影響を近似的に一つにまとめ上げて計算するなどの様々な手法がとられているが本研究では溶液条件を変えないまま一部の粒子を計算から除外し、計算に取り入れる粒子数そのものを少なくする方法を模索した。計画当初においてその理論的枠組みはほとんど出来上がっていたが研究を進めるうちに当初計画の方法では荷電高分子表面近傍におけるイオン分布を正しく表現できないことがわかった。その理由を以下に詳述する。本方法では粒子を{N_<ex>,N_o,N<ind>}の3種に分けて考え実際にシミュレーションで動かすのはN_<ex>の粒子のみであるがこの粒子の1個を考えてその外場φへの応答を考えるとき、その確率分布関数は当初考えていた方法の帰結であるexp(-βφ+βμ)ではなくexp(βφ+βμ)-exp(βμ_o)であるべきだからである。ただしここで、exp(βμ_o)はN_oの粒子の濃度である。これを実現するための適切な修正を加えて新しい方法を実行してみると2本の平行荷電高分子ロッド間の実効的ポテンシャル(相関関数)、及びその表面近傍におけるイオン分布に関して通常のGCMCのシミュレーションの結果を見事に再現することがわかった。残念ながら低塩濃度の条件では粒子数を減らしすぎると(μ_oを大きく取りすぎると)結果が合わなくなり粒子数をそれほど大きく減らすことはできなかったが、逆に高塩濃度の条件では例えば700個ある粒子を150個程度まで減らしても通常のGCMC法を使った(従って700個の粒子をフルに計算した)結果との間にほとんど差異は認められなかった。このことから、本方法は高塩濃度系や高分子の質量に対してシミュレーションセルの体積が大きい大規模率の計算に対して極めて強力な方法となりうることが確かめられた。これらの成果の詳細は現在論文としてまとめている最中であり、できる限り早く公表するつもりである。
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Research Products
(2 results)