2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
歸家 令果 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (10401168)
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Keywords | 物理化学 / 反応動力学 / 強光子場科学 / 電子回折 |
Research Abstract |
平成19年度は強レーザー場電子散乱実験を実現するための装置開発を進めた。実験装置は、単色電子線源、散乱チャンバー、エネルギー分解回折像装置からなる。1keVの単色電子線を強レーザー場中で分子と衝突させ、エネルギー分析器により光電場内で散乱された電子を選別し、二次元検出器で検出する。平成19年度は、装置の組み上げを完了し、テスト実験を実施して装置性能を評価した。ファラデーカップによる電子線強度測定から、単色電子線源は当初の予定通り約1μAの電子線を発生できることが分かった。また、電子線と各種アパーチャー、スリット、電子エネルギー分析器等のアライメントを行い、電子銃から出射された電子が検出器まで到達できることを確認した。Arガスを試料として、弾性散乱電子の角度分布測定を行い、電子エネルギー分析器等の電極へ印加する電圧の最適値を求めた。得られた弾性散乱電子のエネルギー幅から、装置全体のエネルギー分解能は当初の目標を上回る約0.4eVであることが分かった。また、散乱電子の捕集限界は散乱角±15°であり、小角散乱領域に現れるドレスト状態形成を示す信号を観測するには十分な性能であることが確認された。観測された弾性散乱電子のエネルギー分布の裾の広がりは非常に小さく、中心エネルギーから波長800nmの一光子分(1.55eV)シフトしたエネルギー値での分布は殆どゼロであった。開発する実験手法では強レーザー場中で散乱されて光子エネルギーを吸収した散乱電子の微小な信号を捕らえる必要があるが、この結果は光子エネルギー吸収電子を明確に選別して観測可能であることを示している。
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