2007 Fiscal Year Annual Research Report
磁性伝導体の全ての相互作用パラメータの分子軌道法による厳密計算と分子設計への適用
Project/Area Number |
19750005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川上 貴資 Osaka University, 大学院・理学研究科, 助教 (30321748)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / スピンエレクトロニクス / 超伝導材料・素子 / 分子性固体 |
Research Abstract |
平成19年度は、分子性結晶内の各分子に関してその構造と電子状態の解析を中心に実行した。既知の磁性伝導体の分子性結晶のうち、特に興味深い系では、共通した結晶構造が見られる。つまり、TTF骨格等を有したドナー性分子がπ-πスタッキングした2次元層と、そのカウンターイオンの2次元層である。その構成単分子に着目したとき、その構造は平面性が強く、分子全体にπ電子雲が広がっている。そこで、いかにTTF骨格に官能基の修飾を施すかでその電子状態的な性質が変化する。それは分子間の相互作用パラメータに影響を与え、最終的には結晶全体の物性に関与する。 この様に興味深いTTF骨格としては数多くが報告されているが、特に、大阪府立大学の杉本教授の研究室で報告されている結晶群に関して解析を進めた。これらは、局在スピンと遍歴電子とが相互作用する磁性伝導体と考えられ、これらの特に磁性に関する量子化学計算を用いた理論的研究を行った。特に、(EDT-TTFVO)2FeBr4等は、伝導性は半導体的であるものの、磁性としては強磁性を示すものであり、この磁性の発現メカニズム関して解析を進めた。 具体的には、分子間の磁気的相互作用を詳細に解析するミクロ的な視点と、求まった各パラメータから統計力学処理(量子モンテカルロ法)を実行したマクロ的な視点で行った。前者に関しては、磁気スピン源となるFeBr4-イオンのd軌道の5個電子(S=5/2)が、互いに直接・間接の両者で相互作用することが重要である。我々の詳細な計算から、この直接相互作用はd-d相互作用であり、その大きさは配向により正負いずれもとりうるが、値は小さいことが判明した。一方、間接相互作用はπ-d相互作用であり、これは有意に寄与があることが判明した。これらより結晶全体の磁気的ネットワークの形態が明らかになった。
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Research Products
(18 results)