2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750013
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
安池 智一 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10419856)
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Keywords | 表面吸着分子 / 電子状態 / 共鳴状態 / クラスターモデル / 表面光化学 |
Research Abstract |
表面での分子操作および観測手法の目覚ましい進歩によって,現在,表面吸着分子の物理化学の精密化が進行しており,以前にも増して表面吸着分子系の電子状態を知ることが可能な第一原理的な計算理論の必要性が高まっている.本研究では,吸着分子と近傍の表面原子からなるクラスターによるモデルの欠点を,クラスター末端に外向波境界条件を課すことで克服する新手法の開発を目的としている. 本年度は,第一原理計算プログラム作成と並行して,モデルポテンシャルに対して本手法を適用し,表面吸着分子系の性質を調べた.その結果,従来のクラスターモデルに比較して,結合距離や吸着エネルギーといった物性値のクラスターサイズ依存性が著しく低いことが示された.一体の縮約密度行列の解析より,この好ましい性質は波動関数がクラスター末端で内部に跳ね返されることなく適切に表現されたことによっていることが明らかとなった.明示的には扱わない環境に対する化学ポテンシャルを定義することによって,本手法で得られた電子散逸の速度を,吸着分子・表面間の電子移動の速度と関係づけることにも成功した. また,ハリスらの金属表面吸着分子のモデルポテンシャルに対して本手法を適用すると,吸着分子に局在した電子状態が,金属表面の電子状態と透熱的に分離されることを見いだした.事前には予期されなかったこの発見により,金属表面吸着分子系の核ダイナミクスの取り扱いは,本手法により著しく簡単化されることが分かった.実際に,電子散逸を含む核波束の時聞発展計算を行うことにより,金属表面の光照射によって生じる吸着種のコヒーレント振動が,従来言われてきたラマン機構に加え,準安定な電荷移動吸着種を経由する新たな機構によっても生じうることを示すことに成功した.
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