2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750013
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
安池 智一 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10419856)
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Keywords | 表面吸着分子 / 電子状態 / 共鳴状態 / クラスターモデル / 表面光化学 |
Research Abstract |
I. 新手法に基づく第一原理計算プログラムの開発 分子から遠く離れた空間領域でのみ空間座標を複素スケーリングするexterior complex scalingと呼ばれる手法によって, 実空間グリッド表示の密度汎関数法に基づく電子状態計算プログラムに外向波境界条件の導入を行った. プログラム中で用いられている擬ポテンシャルは遠方で解析関数であり, exterior complex scalingと組み合わせることでグリッド基底で表現された行列要素から直接複素スケーリングを行うことが可能である. グリッド法においては, 解くべき固有値問題の行列の次元が著しく高くなるが, Jacobi-Davidson法の適用により数十万次元の複素対称行列の対角化も短時間で行えるように実装した. テスト計算の結果は概ね良好であったが, 固有値の縮重度が高い場合に正確な固有値・固有ベクトルが得られない場合のあることがわかり, 今後は桜井一杉浦法などの適用を検討している. II. モデルポテンシャルを用いた応用研究 昨年度ハリスらのモデルポテンシャルに本手法を適用した結果発見された「透熱分離された吸着種の励起状態のポテンシャルエネルギー曲面」に基づいて, 吸着種の核波束の時間発展計算を行い, 表面吸着系の光励起によって起こる吸着種のコヒーレントな振動の励起メカニズムを検討した. 特に, レーザーによる励起過程もシミュレーションに含めることで, レーザー条件による励起メカニズムの違いを検討した. その結果, 非共鳴励起の場合には従来言われてきたラマン機構が支配的であるのに対し, 共鳴励起をした場合には, 準安定な電荷移動吸着種を経由する新たな機構によって引き起こされるコヒーレント振動が支配的となることを明らかにした. この新しい機構によって引き起こされる振動の初期位相の励起波長依存性は実験によるものと一致し, 新手法の有効性が実証された.
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