2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 慈久 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特任講師 (70333317)
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Keywords | 化学物理 / 光物性 / 放射線、X線、粒子線 |
Research Abstract |
(1) 水、氷、溶液のその場状態観測のための、ファーバープローブ付反射型FTIRの位置決めを正確に行った。水(H2O)、重水(D2O)、HDO、氷およびアセトニトリル水溶液に対してその場FTIR観測を行い、軟X線発光スペクトルとの直接比較を行った。この結果から、軟X線発光でもFTIRでも、HDOを測るといずれも軽水と重水の混合比通りの足し算となることがわかった。これは重水素置換効果によって分子の対称性が崩れても、電子状態には影響しないことを示している。またFTIRスペクトルでは結晶氷の信号が得られることから、昨年度問題となっていた軟X線発光に現れる氷由来でない信号成分は、照射による表面近傍のラジカル生成に起因することが示唆された。 (2) 低温側で±0.5K以内の精密温調ができるようになった。これを用いて、水-アセトニトリル混合系の温度依存性を精密に測定した。最も濃度揺らぎが大きいモル分率Xan=0.38でも、温度による軟X線発光スペクトルの変化は純水のそれと同程度であったことから、軟X線発光は濃度揺らぎに対して極めて鈍感であるごとが示唆された。一方で、アセトニトリル濃度を振った場合の軟X線発光スペクトルの変化は大きかった。まとめると、軟X線発光スペクトルは水-アセトニトリル間の弱い水素結合の存在する割合(モル分率)には敏感で、モル分率が一定である限り、その中で濃度が揺らいでも変化しないということがわかった。 (3) 現在のところ、(1) に示したように結晶氷でも照射による影響がスペクトルに現れていることが明らかになり、アモルファス氷との違いが軟X線発光スペクトルで見分けられていない。また、過冷却水においても照射の影響を避けるために試料を送液する必要があり、一方で送液すると、超純水を用いても-10℃に到達する前に凍ってしまう問題が残された。
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