2008 Fiscal Year Annual Research Report
複合的シミュレーション手法を用いた酵素機能の理論予測
Project/Area Number |
19750021
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石田 豊和 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 計算科学研究部門, 研究員 (70443166)
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Keywords | 電子状態計算 / 分子動力学計算 / QM / MM法 / 自由エネルギー計算 / FMO法 / 酸素反応 / 基質認識 / Chorismate Mutase / ODCase |
Research Abstract |
本研究の目的は、大規模高精度な量子化学計算と分子動力学計算を組合せた複合シミュレーション技術を基盤として、タンパク質の構造機能相関を明らかにする事にある。特に、酵素触媒要因の中でタンパク質の極性環境が反応に与える影響を明らかにする事が本研究の課題である。このため(1)ab initio電子状態計算を基盤として溶媒和タンパク質環境をリアルに扱うモデルの確率と、(2)自由エネルギーレベルで酵素反応の記述を可能とする手法の確立を目指す。対象となる系は、遷移状態の安定化が主な要因となる酵素(Chorismate Mutase)と基底状態の不安定化が主な要因となる酵素(ODCase)を取り上げ、両者の比較から酵素反応の本質を探る。 Chorismate Mutaseに関しては天然型酵素の反応機構に関して、QM/MM計算による反応経路のモデリングとフラグメント法を組合せた階層的な解析手法を駆使する事で、タンパク質環境の作り出す静電場の効果、およびタンパク質の分極の程度を見積もる事に成功した。次に系統的に作成した変異型酵素の反応プロファイルを自由エネルギーレベルで詳細に議論する事で、差異の導入が酵素活性にもたらす影響を(1)電子状態変化の観点と(2)構造変化がもたらす動的要因の2点に分けて議論した。ODCaseに関しては、基質が大きくES錯体形成時の活性中心近傍の構造揺らぎが大きい事から、複数の初期構造を用意して反応経路を計算する事を試みた。独立に計算した複数の反応経路モデルとエネルギー成分解析から、反応プロファイルがほぼ等しくても、タンパク質の静電相互作用の度合いは基質の初期配座に大きく依存している事が明らかとなった。この系に関して主たる触媒要因を探る為には、更なる構造モデルの準備と大規模なab initio QM/MM計算が必用な事が明らかとなった。
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