2009 Fiscal Year Annual Research Report
複合的シミュレーション手法を用いた酵素機能の理論予測
Project/Area Number |
19750021
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石田 豊和 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 計算科学研究部門, 研究員 (70443166)
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Keywords | 電子状態計算 / 分子動カ学計算 / QM / MM計算 / 自由エネルギー計算 / FMO計算 / 酵素反応 / Chorismate Mutase / 糖鎖認識 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大規模高精度な量子化学計算と分子動力学計算を組合せた複合シミュレーション技術を基盤として、タンパク質の構造機能相関を明らかにする事にある。本研究てはタンパク質の基質認識と触媒反応に注目し、それぞれab initio QM/MM計算を中心技法としたモデリング手順を駆使する事で、原子レベルからの現象解明を目指した。 基質認識に関してはレクチンの糖鎖認識を対象とし、特にEセレクチン-シアリルルイスX糖鎖複合体の糖鎖結合モードの詳細な解析を試みた。糖鎖結合状態を表すモデルとして、溶媒和の自由度と糖鎖の配座変化により定義される2次元自由エネルギー面を導入し、この縮約されたエネルギー面上の安定領域で糖鎖構造を同定する事を試みた。同定された集団構造に対しQM/MM計算からNMRスペクトルの計算と帰属を行ない、糖鎖結合モードの詳細な解析に成功した。一連の大規模計算から明らかとなった重要な点は、1)糖鎖結合構造は複数の揺らいだ集団構造の平均で定義するのが妥当である点と、2)糖鎖結合サイトで強い相互作用を持つのはフコースとカルシウムイオン結合領域に限られる事、等である。 酵素反応に関してはこれまで解析に取り組んで来たChorismate Mutaseをモデル系として、自由エネルギー計算、QM/MM計算、FMO計算を組合せた系統的なモデル化手段を用いて、変異型酵素の反応性低下の分子論的起源に関して詳細な解析に取組んだ。特に変異導入の効果を、1)電子状態変化の観点と、2)タンパク質ダイナミクスの観点から考察した。 前者について、化学反応そのものは活性中心近傍のみで制御さ、変異の導入による電子状態変化に対しタンパク質環境はロバストである事が明らかとなった。後者に関しては、変異導入に伴うタンパク質ダイナミクスの影響は活性中心遠方まで及び、変異の影響はタンパタ質ダイナミクスを介して適時調節されうる事が明らかとなった。
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Research Products
(13 results)