2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750036
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
戸叶 基樹 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 助教 (80372754)
|
Keywords | ポルフィリン / 近赤外色素 / 遷移金属錯体 / 有機金属錯体 / 水中挙動 |
Research Abstract |
「骨骼融合種の創製と各種誘導体合成」 新規骨格融合種として、二重N-フューズポルフィリンの合成に成功した。二重N-フューズポルフィリンは18π電子系と比較小さい共役系を有するにも関わらずその吸収波長は1300nmを超えるという特異な電子状態を有していた。これは、同数のπ電子からなるアヌレン類の中で最も大きい値であり、環内部化学修飾がHOMO-LUMOギャップの縮小に極めて効果的な戦略であることが実証された。また、様々なエテノ架橋ポルフィリンや環内部にアルキニル基、シアノ基、ジアゾ基を有するN-混乱ポルフィリン誘導体の合成にも成功し、それらの構造および電子状態について詳細に解析した。その結果、環内部に架橋型構造を有することがHOMO-LUMOギャップを効果的に縮小させる上で重要な要素であることが強く示唆された。同時に、環内部への汎用的な置換基導入法を確立することができた。 「N-フューズポルフィリンの水中挙動の解明」 水溶性骨格融合種の初めての例としてオリゴアルギニンをクリック反応により連結したN-フューズポルフィリン誘導体の合成に成功し、その水中でのプロトン化挙動、会合挙動ならびに基礎的な光学的性質について明らかとした。骨骼融合種の特性を水系で利用する応用研究に向け、基盤となる重要な合成技術が開発された。 「金属-炭素結合を有する燐光材料の開発」 環内部に金属-炭素結合を有する大環状化合物錯体(主として金錯体および白金錯体)を合成し、その性質を検討したところ、室温・空気中に置いても近赤外領域に燐光を有することを見いだした。金属-炭素結合によって独特な配位子場が形成され、重原子のd電子由来の消光過程が抑制されることで、通常では困難な近赤外領域での常温燐光を達成できたと考えている。
|