2008 Fiscal Year Annual Research Report
フェロセンの酸化還元を利用した有機金属ロタキサンの分子運動と発光挙動の制御
Project/Area Number |
19750044
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
須崎 裕司 Tokyo Institute of Technology, 資源化学研究所, 助教 (70436707)
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Keywords | ロタキサン / フェロセン / クラウンエーテル / 超分子化学 |
Research Abstract |
平成19年度に合成したフェロセニレン部分を有するクラウンエーテルを環状分子として、10種類のロタキサン誘導体の合成を行った。軸状分子としては、二級ジアルキルアンモニウムあるいは、ジアルキルアクリルアミド部分を有する分子を採用した。これらのロタキサンの電気化学を評価すると、有機鉄部分の電子状態を観測することができた。また、発光性置換基を有する軸状分子を構成要素とするロタキサンの分光学的性質を評価すると、その吸収スペクトル測定ではロタキサン形成に伴う顕著な物性変化は認められないものの、その置換基に由来する発光は、環状分子内部のフェロセン部分によって著しく消光されることがわかった。なおかつ、その消光効率は、発光性置換基と環状分子との距離に依存した。また、ロタキサン軸状分子に、アクリルアミド部分を導入した[2]ロタキサンとスチレンとのラジカル重合を行うことによって、ポリスチレンにロタキサン構造を有する側鎖を導入した構造を有する、含フェロセンポリロタキサンの合成にも成功し、その熱的性質及び、電気化学的性質の評価をおこなった。 本研究の特色はロタキサンの機能制御という目的を、フェロセンの酸化還元特性および光物性を生かして達成したとらことである。これによって、これまでにあまり検討されてこなかった、ロタキサン環状分子を有機金属化合物によって修飾するという手法が有効であることを示したという意義がある。また本研究では、環状分子部分と軸状分子部分の電子的な反発の検出にも至っており、これは将来、電気化学的及び光化学的の双方に活性な超分子材料を開発するために重要な知見を与えるものである。
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