Research Abstract |
触媒的にケトンやアルデヒドのα位で炭素-炭素結合反応を行う研究(特に, アリル基を導入する手法)は, 天然物合成や機能性材料の合成中間体として幅広い利用価値を有するため広く研究されている。しかしながら, 選択的にビニル基を導入する方法論の開発だけは限定的であった。研究者代表は, 金触媒によるアルキニルシリルエノールエーテルを利用するsila-Claisen転位反応を利用し, ケトンやアルデヒドのα位にビニルシリル基を導入する方法論を開発した。一価のカチオン性金錯体触媒存在下, ケトン由来のアルキニルシリルエノールエーテルとメタノールの反応を行うと, 室温でsila-Claisen転位反応が進行し, (Z)体選択的に生成物が得られた。得られてきた生成物を玉尾酸化することにより, β-ケトアルデヒドが収率良く得られた。ただし, 本方法論は, 環状ケトン由来の基質にのみ有効であり, 鎖状ケトンやアルデヒド由来の基質では, 反応の進行よりも基質の分解が進行してしまう問題があった。鋭意検討の末, この問題を解決する方法を新たに開発することができた。これまで, 反応場の中心元素であるケイ素上の置換基は, アリル基とアルキニル基を除くとフェニル基が2つのみであった。そこで, 基質として用いるケイ素化合物の安定性を向上させるために, ケイ素上の置換基としてフェニル基を3つ導入し, sila-Claisen転位反応の概念に基づき分子設計を再度行い検討した。反応は, 基質(1等量), 触媒として(PPh_3)AuSbF_6を用い, 求核剤としてメタノール(3等量), ニトロメタン溶媒中, 室温で実施した。その結果, 鎖状ケトンやアルデヒド由来の基質からでも反応が進行し, 60〜80%程度で生成物が得られた。本手法により, ケトンやアルデヒドのα位に多置換ビニルシリル基を有する化合物を効率的に合成することが可能になる。興味深いことに, 以前開発したアルキニルsila-Cope転位反応とは異なり, 配位子としてはアリールポスフィン系が良く, 極性溶媒を用いることが重要であった。研究計画の不斉反応は, 現在進行中である。
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