2009 Fiscal Year Annual Research Report
9族金属錯体を用いる酸化剤不要のアルコール酸化触媒系の開発と合成化学的応用
Project/Area Number |
19750075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 健一 Kyoto University, 地球環境学堂, 准教授 (80293843)
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Keywords | イリジウム / 酸化反応 / アルコール / 水素 |
Research Abstract |
本研究者は、Cp^*(ペンタメチルシクロペンタジエニル)を配位子として有する9族金属錯体触媒の化学に注目し、研究に取り組んできた。その中で、アルコール分子の関わる水素移動型反応において、[Cp^*IrCl_2]_2ならびに[Cp^*RhCl_2]_2が極めて高い触媒活性を示すことを見出し、これらを触媒として活用するさまざまな有機合成触媒系を開発してきた。本研究課題では、新たに機能性配位子をこれらの9族金属錯体触媒に導入し、酸化剤を必要としないアルコール酸化触媒系、すなわち脱水素的酸化触媒系の開発に取り組んでいる。20年度までに、Cp^*イリジウム錯体に2-ヒドロキシピリジン、2-ヒドロキシ-5-トリフルオロメチルピリジン、2-ヒドロキシ-6-フェニルピリジン等の機能性配位子を導入した錯体触媒の合成を行い、第二級アルコールの脱水素的酸化反応においてこれらの錯体触媒が高い活性を示すことを見出してきた。 本年度は、第一級アルコールの脱水素的酸化反応によってアルデヒドを得る触媒系の開発に焦点を絞り、2-ヒドロキシ-6-フェニルピリジン配位子を導入したCp^*イリジウム錯体触媒を用いて調査した。最適反応条件の探索の結果、本錯体触媒(2.0mol%)をナトリウムメトキシド等の塩基(5.0mol%)と組み合わせて用いることにより、ベンジルアルコールの脱水素的酸化反応がトルエン還流下で良好に進行し、ベンズアルデヒドが収率90%で得られることを見出した。第一級アルコールの適用範囲についても調査し、各種官能基を有するベンジルアルコール類や脂肪族アルコールの反応においても、本触媒系により対応するアルデヒドが中程度から極めて高い収率で得られることを明らかにした。本触媒系は酸化剤を必要としないで第一級アルコールの脱水素的酸化反応を高効率的に達成した最初の例である。
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