2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 佳亮 Kyoto University, 工学研究科, 助教 (60346088)
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Keywords | カルボシアノ化反応 / アルケン / 遷移金属触媒 |
Research Abstract |
ニッケル触媒を用いて炭素-シアノ基結合を切断し,有機基とシアノ基を不飽和結合に付加させるカルボシアノ化反応は,炭素-炭素結合二つを一挙に構築できるうえ副生成物を全く生じないため,アトムエコノミーに優れるきわめて有用なニトリル合成法である.われわれは,ニッケル/ルイス酸協同触媒を用いることにより,アルキンのカルボシアノ化反応の効率が飛躍的に向上し,ほとんど全てのタイプのニトリルが利用できることをこれまでに報告している.一方,不飽和化合物としてアルケンの適用範囲は,1,2-ジエンやノルボルネン,ノルボルナジエンに限られていた.そのような背景から本研究では,アルケンの分子内カルボシアノ化反応の開発を行っている.本年度は,アルケンの分子内アリールシアノ化反応を検討した.アリール-シアノ基結合のニッケル(0)への酸化的付加,アルケンの分子内挿入によって生じるアルキルニッケル中間体がβ-水素を持たないような基質を合成して,ニッケル/ルイス酸触媒存在下で反応させたところ,ベンジル位に四級炭素を含んだ環状構造を有するさまざまなニトリルが収率良く得られることを見つけた.さらに光学活性配位子(S,S)-i-Pr-FOXAPや(R)-Prophosを用いることによってエナンチオ選択的な分子内アリールシアノ化反応が進行し,不斉四級炭素を有するニトリルの簡便合成もできるようになった.この不斉触媒反応を利用することによって,アルツハイマー病治療薬の候補品である(-)-physostigmineの合成中間体として知られている(-)-esermetholeや鎮痛剤(-)-eptazocineの不斉全合成を達成した.
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