Research Abstract |
本研究は,銅触媒とジカルコゲニドを用いて,アルキンへの異なる置換基の導入反応を行い,β-置換アルケニルスルフィドの合成法を開発し,同時に,ジカルコゲニド化合物の2つのカルコゲニド基を無駄なく利用できる反応を確立することを目的にしている。 19年度の研究においては,銅触媒存在下,アルキン,ジスルフィドとn-テトラブチルアンモニウムハライドを反応させることで,目的とするβ-ハロアルケニルスルフィドを収率良く合成できることを見出した。さらに,その立体化学は,アンチ付加体であり,かつ,ジスルフィド化合物のスルフィド基の両方とも無駄なく利用できることが分かった。 本方法では,基質として内部アルキンを用いることで,良好な結果を与えた。また,ジスルフィドにおいては,通常,触媒毒性の強いジアルキルジスルフィドを用いることもできる。さらに,導入できるハロゲンは,臭素,ヨウ素,塩素と幅広く使用でき,特に,β-プロモアルケニルスルフィドは,比較的安定で,かつ,その臭素部分を他の置換基に変換することが容易である。 加えて,この反応機構を調査すると,銅触媒は,大気中の酸素により酸化されることで,触媒活性が維持されていることが明らかとなった。すなわち,中間体として生成すると考えられる銅-スルフィド錯体は,プロトン存在下,酸化されることにより,ジスルフィドと銅触媒を再生しているものと考えられる。これにより,本反応では,ジスルフィドの両方のスルフィド基を有効に利用できることを明らかにすることができた。
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