Research Abstract |
フェノール樹脂はフェノールとホルムアルデヒドを酸または塩基触媒を用いて付加縮合することによって得られる熱硬化性樹脂であり,100年の歴史を有する人類最初の人工プラスチックである。安価で耐薬品性・耐熱性に優れているため,現在でも耐熱材料,建築資材,コンクリート,塗料などに用いられ莫大な量が生産されている。また液晶パネルや半導体基盤に用いられるレジスト材料としてその重要性は増す一方である。しかしフェノールとホルムアルデヒドは反応性が高く,反応を制御することが困難であり,ポリマーの精密分子設計に関する研究はほとんど行われてこなかった。 そこで研究者らはフェノール類の水酸基に機能分子を導入したデザイン型フェノールを用いてノボラックの合成を行うと,従来困難であったポリマーの主鎖構造,結合様式,分子量や高次構造の制御が可能なことを提唱している。この新しい概念の重合法により,直鎖状,熱可塑性,超高分子量ノボラックの合成が可能となっただけでなく,10ナノ程度の芳香族系微粒子や立体規則性高分子の構築にも成功した。現在,これらのポリマーの性質を明らかにするとともにブレンド,有機/無機複合化,光機能化などの手法を用いて,フェノール樹脂の優れた耐熱性や機械的特性が生かされたナノマテリアルの開発を行っている。今回,400℃を超える耐熱性を有する新規なポリマー,シリカゲルとの有機・無機ハイブリッド材料,反応性の微粒子であるポリカリックスアレーンを合成し,その性質を明らかにした。
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