2008 Fiscal Year Annual Research Report
オキサラート誘導体を利用した有機・無機複合錯体における磁気構造の次元性制御
Project/Area Number |
19750105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎本 真哉 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (70345065)
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Keywords | 強磁性 / 分子性固体 / 電荷移動相転移 / 比熱 / 次元性 / 誘電応答 / 有機・無機複合錯体 / 希釈磁性 |
Research Abstract |
[M_1^<II>M_2^<III>(dto)_3]系遷移金属錯体では、その磁性は主に[M_1^<II>M_2^<III>(dto)_3]層によって担われていると考えられるにもかかわらず、層間に挿入する分子によってその磁気的挙動は大きく異なる。このことは層間の相互作用に挿入した分子が寄与していることを示す。これまでに電荷移動を伴うスピン転移をもたらす(C_3H_7)_4N[Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]のカチオンを置換することによる磁性の変化を系統的に調べた研究を行うことで、層間に挿入する分子の大きさ、n電子系の広がりなどが直接の影響を与えていることが明らかとなっている。 このような磁性の振る舞いを理解する一つの方法として、磁性サイトを非磁性元素で置換することで磁気ネットワークの切断を行い、その次元性に関する知見を得ることができる。そのため、(n-C_3H_7)_4N[Fe^<II>_<1-x>Zn^<II>_xFe^<III>(dto)_3]をx=0-1の範囲で連続的に合成し、その磁性を調べた。その結果、x=0.00から0.26に変化させることで強磁性転移温度が7Kから10Kへと上昇し、さらにxを大きくするにつれて、今度は強磁性転移温度が低下、x=0.96以上では2K以上で磁気秩序化しなくなることが明らかとなった。さらに、x=0.26以上ではx=0.00で見られた特異な電荷移動挙動を見せないことも明らかとなり、わずかな非磁性置換が本物質系の磁性に大きく寄与することがわかった。この成果は、分子磁性体の国際会議である ICMM2008(Sep. 2008, Florence(Italy))で発表し、Polyhedron誌への掲載が決定した。
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