2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750107
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 一志 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教 (60342953)
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Keywords | 外場応答性 / スピンクロスオーバー錯体 / 分子性固体 / 複合物性 / 電気伝導性 / 誘電体物性 / 光応答 / プロトニクス |
Research Abstract |
温度・圧力・磁場・光などの外場に応答する双安定分子であるスピンクロスオーバーイオンの大きな構造変化に注目し、分子性固体に埋め込むことで伝導性・磁性・誘電性といった固体電子物性の外場応答の実現を目指した。これまでに分子性導体での伝導性の双安定状態を作り出すこと、さらに低温での光照射により磁化の光応答性もに成功してきた。昨年度、プロトン介在型誘電性やプロトン伝導性をスピンクロスオーバー錯体に付加するため、プロトン性極性アニオンである硫酸水素イオンを有する鉄(III)錯体の合成を試みたところ、酸により分解されることなく金属錯体[Fe(qsal)_2](HSO_4・CH_3OHとして単離に成功し、新規な鉄(III)スピンクロスオーバーであることを明らかにした。本年度、この錯体の結晶構造の温度変化を明らかにすることができ、二量体を形成し孤立しているHSO_4イオンの秩序-無秩序化がスピン転移とカップルしていることが明らかとなった。さらにHSO_4イオンの水素結合の次元性を向上させ協同的なプロトン介在型物性の実現を目指し、HSO_4イオンを有する鉄(II)錯体の合成を検討したところ、[Fe(bpp)_2](HSO_4)_2・2CH_3OHという新規な錯体を得ることに成功した。単結晶構造解析の結果、HSO_4イオンは水素結合により一次元に配列し、さらに配位子との間に水素結合を形成していることが明らかとなった。配位結合距離、磁化率の測定からこの錯体は室温で低スピンであるが、酸性であるプロトン性アニオン、硫酸水素イオンを金属錯体へ導入することがより一般的に可能であることを示す結果である。今後、配位子設計や金属錯体作製条件を検討することでスピンクロスオーバーを示す錯体が得られれば、外場応答性を持つプロトン誘電性金属錯体やプロトン伝導性金属錯体開発へとつながるものと考えられる。
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