2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750116
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
唐澤 悟 Kyushu University, 大学院・薬学研究院, 准教授 (80315100)
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Keywords | 単分子磁石 / 磁気緩和現象 / ヘテロスピンシステム / 分子集積 |
Research Abstract |
申請者らのグループでは、有機スピン源と磁気異方性の大きなコバルト(II)からなるヘテロスピン単核単分子磁石を構築し、その有用性について報告してきた。特に、有機スピン源としてジアゾ基の光照射により発生する三重項カルベンと、コバルトチオシアネートとの組み合わせにより得られた錯体を剛体溶液中、磁気的測定することにより、活性化エネルギー障壁が89ケルビンの単核単分子磁石を構築することに成功している(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 13676-13677)。今回、有機スピンを持つ配位子に様々な置換基を導入することにより、超分子的に単核単分子磁石を配向させることを目的として研究を行った。本研究課題が開始される以前までは、結晶状態でのヘテロスピン単核単分子磁石の構築には至っていなかった。そこで、有機ラジカルのまわりに様々な置換基を導入し、その構造と磁気的性質の相関関係について詳細に検討を行った。置換基として比較的小さい基を導入した系では分子間の接近により反強磁性的相互作用の影響を示唆した磁性であったが、より嵩高い基(フェニル基、t-ブチル基)を導入することにより、分子間での磁気的相互作用が無視できる単核単分子磁石の構築に成功した。本研究成果は、J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 3079-3094 に掲載され、有機ラジカルとコバルトを用いたヘテロスピン系での初めての結晶状態での単核単分子磁石であり、分子を配向させる観点において重要な研究成果となった。また、長鎖アルキル基の導入による単分子磁石のゲル化についての検討を行った。炭素鎖12個以上のアルキル鎖を導入することにより、-30度以下において MTHF 溶媒中ゲル化現象を示すコバルト錯体の構築に成功した。TEM 写真によりナノサイズの形態について検討したところ、数十ナノサイズの結晶状と思われる分子集積体の生成が明らかとなった。その磁性について現在検討中である。
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